
「人間、志を立てるのに遅すぎるということはない」
これは、イギリスの首相も務めたスタンリー・ボールドウィンの言葉です。
近年、社会人として一定期間働いているうちに、「やはり医師になりたい」と考える人が増加してきています。
医師になりたいならば、目指す道は医学部入学試験合格の一つしかありません。
いわゆる「医学部再受験」というものです。
医学部再受験を成功させ、医師になるということは簡単な道のりではないですが、不可能なことではなく実際に成功させている先人たちも数多くいます。
当サイトでは、そんな医学部再受験生に寛容な大学や、大学選びにあたって考えるべき点について紹介していきます。
医学部再受験は厳しい?

まず最初に、そもそも医学部再受験の難易度について簡単に説明していきたいと思います。
単刀直入に言うと、医学部再受験は非常に難しいと言わざるを得ません。
これは医学部再受験生のみならず再受験生一般に言えることですが、受験に必要な科目を一から勉強するということには膨大な時間を要します。
そしてその時間は受験科目に最後に触れてから時間が経っていればいるほど指数関数的に増えていきます。
再受験においては、社会人になって久しく試験に触れていないということも相まってこの勉強量に耐えることができず、志半ばで挫折してしまう人も多くいるのです。
ことさら医学部の入試は、どの大学を選んだとしても難易度が高いことで有名ですから、再受験成功には絶対に諦めない鋼の心が必要となってくるでしょう。
そして、医学部再受験生にとって最も大きな障壁が年齢であることは間違いありません。
実際に年齢が試験の合否にどれだけ寄与しているのかはブラックボックスとなっていますが、近年報道でもあったように、年齢差別をしている大学が存在しているというのは紛れもない事実です。
摘発された大学の多くでは年齢差別は是正されたとされていますが、未だに明るみに出ていないだけの大学もあるでしょう。
ただし、もちろんすべての大学で年齢が高いことが不利になるわけではないですし、学問を学びなおしたいと考える熱意を歓迎してくれる大学も多数あります。
ここからは医学部再受験に寛容かどうかの判断方法や、医学部再受験に寛容であると考えられる具体的な大学を見ていきましょう。
再受験に寛容かどうかの判断方法

まずは、特定の大学が医学部再受験生に寛容なのかどうかを判断する方法を見ていきます。
再受験生の合格者の割合を調べる
これは各大学が公表している年齢別の大学入学試験合格者割合のデータを見れば分かることですので簡単に調べることができ、かつ信用度が高い情報になります。
このデータを見る際には18歳は現役生、19〜21歳は浪人生、22歳以上の受験生の多くは再受験生であるということを頭においておきましょう。
年齢別の合格者割合を公開していない大学もあるかと思いますが、公開していないのであればそれなりの事情がある可能性もありますのでその点も判断のポイントになってきます。
実際の医学部合格者の生の声を聴く
医学部再受験生の数は想像よりも多く、ネットで調べると複数のブログがヒットします。
実際に再受験生が合格することができた大学名や、面接での雰囲気・再受験生がどんなことを聞かれたかを知ることも、その大学が再受験生に寛容かどうかを知る大きな手がかりとなるでしょう。
もちろんここで紹介している方法は一例に過ぎませんから、多面的な観点から大学を調べてみることが非常に重要です。
医学部再受験生に寛容な国公立大学

まずは医学部再受験生におすすめな国公立大学2選を紹介していきます。
滋賀医科大学
医学部再受験生に寛容な国公立大学として、最も有名な大学がこの滋賀医科大学ではないでしょうか。
合格者全体に占める再受験生の割合が例年20%超えと非常に高く、毎年多くの再受験生が合格を掴み取っています。
もちろんその分再受験生の受験者数も多く競争が激化することは予想されますが、それでもなお医学部再受験生にとってはおすすめの大学となっています。
東京大学
東京大学医学部は、再受験生の割合こそ少ないですが、学力の高い医学部再受験生にとっては非常におすすめの大学となっています。
その理由として、医学部のみならず東大全体で年齢を気にせず熱意のある学生を受け入れようといった雰囲気になっているということが挙げられます。
東京大学の再受験生の合格者割合が少ない理由として、そもそも再受験生が受験者全体に占める割合が小さいということがあります。
東京大学が日本最高峰の難易度を誇る入学試験を行っていることは周知の事実ですから、再受験生が忌避するのはもっともですが、逆に言えば試験に通ることのできる学力さえ伴っていれば十分再受験生でも合格可能な大学ということになっています。
さらに、東京大学には2年生の後期で進振りといった制度があり、理科3類以外の科類からでも、成績次第で医学部に進学することができます。
これは「医進」と呼ばれています。
理科1類や理科2類からはもちろんのこと、驚くべきことに文系から医学部に進学するという生徒も一定数いるようです。
従って、「理科3類に合格するのは難しいけど理科1類や2類なら合格できるかも」といった人であったり、「文系出身だから入学試験は文系科目で受けたい」といった人でも希望を持てるのではないでしょうか。
他にも、医学部再受験生に寛容な国公立大学としては例として以下のような大学が挙げられます。
- 山形大学
- 横浜市立大学
- 山梨大学
- 新潟大学
- 金沢大学
- 福井大学
- 富山大学
- 信州大学
- 岐阜大学
- 名古屋市立大学
- 名古屋大学
- 三重大学
- 奈良大学
- 大阪大学
- 和歌山大学
- 岡山大学
- 広島大学
- 島根大学
- 香川大学
- 熊本大学
- 大分大学
- 長崎大学
- 琉球大学
医学部再受験生に寛容な私立大学

次に、医学部再受験生におすすめな私立大学2選を紹介していきます。
東北医科薬科大学
東北医科薬科大学は、2016年に医学部が設置された大学であり、私立大学の中では医学部再受験生に対する寛容度が高いとして有名です。
医師国家試験の合格率も高く質の高い教育を受けることができるため、医師になりたいという強い想いをもった医学部再受験生にはうってつけです。
また、旧帝国大学の1つである東北大学と同じく仙台市内にあり、立地の良さも一つの特徴となっています。
日本医科大学
私立医学部御三家に分類され、「日医」と略されることの多い日本医科大学も私立大学の中では医学部再受験生に寛容な大学となっています。
医学部再受験生にとっては鬼門の面接試験も終始和やかであり、再受験生であるからと言って面接官の対応が変わるといったこともないようです。
そしてなんといっても、日本医科大学の公式ホームページに再受験生の合格体験記が載っていることが、再受験生に寛容であることを如実に表していると言えるでしょう。
公式ホームページにわざわざ載せるということは「我が大学では再受験生を歓迎します」といっているようなものですからね。
気になる方は、是非日本医科大学のホームページを見てみてください。
他にも、医学部再受験生に寛容な私立大学としては例として以下のような大学が挙げられます。
- 聖マリアンナ医科大学
- 国際医療福祉大学
- 帝京大学
- 近畿大学
- 関西医科大学
- 岩手医科大学
- 久留米大学
- 東海大学
- 愛知医科大学
- 東京女子医科大学
- 藤田医科大学
- 杏林大学
文系出身者におすすめの大学

「医学部再受験をしたいけど、文系出身で今更理系科目を勉強し直すことなどできるのだろうか」
こういった悩みを持つ受験生も少なくないでしょう。しかし、悲観することはありません。
文系出身であることを武器に、入学試験を戦うことのできる医学部も多く存在します。
まずは、文系出身者が得意であることが多いであろう英語の配点が大きい大学を国公立と私立で分けて紹介していきます。
英語の配点が大きい国公立大学
共通テストにおいて、英語の配点が大きい国公立大学の一例です。
大学 | 英語 | 数学 | 国語 | 理科 | 社会 |
---|---|---|---|---|---|
熊本大学 | 100 | 50 | 100 | 100 | 50 |
琉球大学(後期) | 300 | 200 | 200 | 200 | 100 |
横浜市立大学 | 300 | 200 | 200 | 200 | 100 |
和歌山県立医科大学 | 150 | 100 | 100 | 150 | 100 |
英語の配点が大きい私立大学
こちらは、入試において英語の配点が大きい私立大学の一例です。
大学 | 英語 | 数学 | 理科2科目 |
---|---|---|---|
順天堂大学 | 200 | 100 | 200 |
東邦大学 | 150 | 100 | 150 |
国際医療福祉大学 | 200 | 150 | 200 |
国語を選択可能な医学部
一部の私立大学では、理系科目の代わりに国語を選択することができますから、文系出身の強みを存分に活かすことができます。
ここでは、国語を選択可能な大学を2つほど紹介していきます。
昭和大学
【必須科目】
- 英語(200)
- 理科2科目(100)(物理・化学・生物から2科目選択)
- 小論文(30)
- 小論文(70)
【選択科目(2科目から1科目選択)】
- 数学(100)
- 国語(100)
※括弧内は配点を表す。
帝京大学
【必須科目】
- 英語(100)
【選択科目(5科目から2科目選択】
- 数学(100)
- 物理(100)
- 化学(100)
- 生物(100)
- 国語(100)
以上を見ていただければ、文系出身であることが逆に有利に働く入学試験があることが分かっていただけたかと思います。
調べる前から諦めてしまうのではなく、自分に合った大学をじっくり調べていき、戦略を立てることも受験の一部です。
大学選びで必要な情報を紹介

これまでは、医学部再受験生に寛容であったり、文系出身者におすすめな医学部を見てきましたが、他にも医学部を選ぶにあたって考慮すべきポイントはたくさんあります。
その点について、説明していきます。
「医学部の選び方」のポイントはズバリ下の6つです。
- 学費
- 入試難易度
- 大学周りの環境
- 大学教育関連情報
- 医学部卒業後のキャリア
- 医学部での進級率
では、各項目について簡単に紹介していきます。
学費
おおまかに、6年間にかかる学費が国公立大学では400万円前後、私立大学では基本的に安くても2000万円以上となっています。
国公立大学と私立大学で学費が5倍以上も差があることになりますね。
従って、経済的に余裕がないという場合には私立大学よりも国公立大学医学部がおすすめとなっています。
入試難易度
入試難易度を測る指標としては、偏差値・倍率・入試科目といったものが挙げられます。
どんなにその大学に入りたくても学力が伴っていなければ不可能ですから、自分の実力に沿った現実的な堅実な大学選びをしていきましょう。
現役生に比べて時間に余裕があまりない再受験生にとってはなおさらこの点が重要となってくるでしょう。
大学周りの環境
医学部では6年間もその大学に通うわけですから、大学周りの環境が自分にあっているか否かというのはQOLに直結してきます。
オープンキャンパス等を活用して、しっかりと確認しておきましょう。
遠方に住んでいてなかなか見に行くことができないという人は、グーグルマップのストリートビュー等を活用すると良いでしょう。
大学教育関連情報
特に注視すべき点は、病院で行われる臨床実習がどのように行われるのかという点でしょう。
全ての診療科を回ることができるのか、それとも特定の診療科は選択によっては回ることができないのかといった話は、実際にその医学部に通っている学生に聞くことが1番ですから、オープンキャンパス等を活用しておきましょう。
また、大学の附属病院で実習を行うことも多いため、附属病院の環境についても調べておくと良いでしょう。
医学部卒業後のキャリア
再受験生で研究をしたいから医学部再受験をするという人は希少かもしれませんが、その大学では臨床医と研究者のどちらの育成に力を入れているのかということを事前に調べておくと、卒業後のキャリアを考えやすくなります。
医学部での進級率
せっかく医学部入試に合格して入ったのに、試験に通れなくて留年してしまう、なんてことは絶対に避けたいものです。
基本的にはコツコツ勉強して試験対策をしていれば、大抵の試験はすんなりと通ることができますが、大学によって留年率に大きな差があるようなので、留年率については事前に確認しておくことを勧めます。
文部科学省の公表しているデータから、留年率を調べることができます。
まとめ
諦めなければ夢は叶う。この気持を忘れずにひたむきに夢に向かって走り抜けてください。
Twitter等のSNSでは、医学部再受験に向けて必死に努力している様子を発信している方も見受けられます。
同じ境遇の仲間がいて、その生の声を聴くことができる。これほど心強いことはありません。
是非こういった情報も活用して、医学部再受験に対するモチベーションを維持していってください。
皆さんの医学部再受験での合格を心よりお祈りしています。