医学部の偏差値・難易度はまだまだ高い

2020年度入試では国公立大学および私立大学とも医学部医学科は志願者減となり、国公立大学は前期日程で6年連続の志願者減少を記録しています。
志願者減と聞いて医学部医学科も容易になってきたのでないかと期待したいところですが、まだまだ偏差値は非常に高く下記のランキングでも非常に高い学力が求められています。
特に近年の傾向として注意しておきたいのは下記3つのポイントです。
2021年から共通テストがスタート
センター試験は2020年を最後に終了し、2021年からは共通テストが新たにスタートしました。
出題意図や配点などセンター試験と異なる点もあるので注意が必要でしたが、英語の外部試験導入や記述が延期となったため、そこまで大きな変更はありませんでした。
結果的に医学部入試では共通テストでも、センター試験と同様にボーダーは9割弱が求められています。
近年は二次試験の配点比率を増やす国公立も増加していますが、引き続き共通テストで高得点を取っておくことは変わりありません。
国公立は後期日程廃止が相次ぐ
近年の医学部入試の傾向としては後期日程廃止の医学部が増えていることです。
国公立大学医学部を希望する再受験生としてはチャンスが前期日程の1回だけになってしまいます。
ただし、その分を前期日程の定員増になっている医学部もあるので、国公立は前期で合格を目指すのがより鮮明になってきています。
ちなみに2021年度から香川大学および愛媛大学の医学部医学科で後期日程が廃止されます。
一般の代わりに推薦の定員が増加
国公立および私立ふくめ全国の医学部全体で言えることは、一般入試の定員が減少し、その分の定員を推薦入試の定員に振り分けている大学が増加傾向でることです。
推薦入試は、専願制が基本であり、合格者=入学者となるため、大学側も学生を確保しやすいメリットがあります。
また、地方では医師不足が深刻な地域も多く、卒業後に地元に残ってもらうためにも地域枠の推薦入試枠で将来の医師を確保するという動きが広がっていること一因。
さらには、推薦入試は現役生および浪人生なら1年目までしか出願できないため、若い人材を確保したいという医学部側の意志も動いているのではないかと思われます。
一般入試の志願者が減ることは医学部再受験生にとっては不利でしかないので、今後の推移を注視する必要があります。
医学部医学科の偏差値一覧【2021年】

国公立大学医学部医学科の偏差値ランキング
順位 | 大学名 | 大手平均 |
---|---|---|
1 | 東京大学 | 75.8 |
2 | 京都大学 | 74 |
3 | 大阪大学 | 72 |
4 | 東京医科歯科大学 | 71 |
5 | 九州大学 | 68.8 |
6 | 千葉大学 | 68.3 |
6 | 名古屋大学 | 68.3 |
8 | 東北大学 | 67.8 |
8 | 神戸大学 | 67.8 |
10 | 北海道大学 | 67.3 |
10 | 横浜市立大学 | 67.3 |
10 | 奈良県立医科大学 | 67.3 |
13 | 京都府立医科大学 | 66.5 |
13 | 大阪市立大学 | 66.5 |
13 | 広島大学 | 66.5 |
16 | 岐阜大学 | 66.3 |
17 | 金沢大学 | 66 |
17 | 岡山大学 | 66 |
19 | 筑波大学 | 65.5 |
19 | 名古屋市立大学 | 65.5 |
21 | 新潟大学 | 65 |
21 | 和歌山県立医科大学 | 65 |
21 | 長崎大学 | 65 |
21 | 熊本大学 | 65 |
25 | 宮崎大学 | 64.8 |
26 | 群馬大学 | 64.5 |
26 | 信州大学 | 64.5 |
26 | 滋賀医科大学 | 64.5 |
26 | 浜松医科大学 | 64.5 |
26 | 山口大学 | 64.5 |
31 | 福井大学 | 64 |
31 | 大分大学 | 64 |
31 | 鹿児島大学 | 64 |
34 | 三重大学 | 63.8 |
35 | 愛媛大学 | 63.5 |
36 | 富山大学 | 63.3 |
37 | 旭川医科大学 | 63 |
37 | 弘前大学 | 63 |
37 | 秋田大学 | 63 |
37 | 島根大学 | 63 |
37 | 佐賀大学 | 63 |
37 | 琉球大学 | 63 |
43 | 札幌医科大学 | 62.8 |
43 | 香川大学 | 62.8 |
43 | 高知大学 | 62.8 |
46 | 鳥取大学 | 62.3 |
47 | 山形大学 | 61.8 |
47 | 福島県立医科大学 | 61.8 |
49 | 徳島大学 | 61 |
私立大学医学部医学科の偏差値ランキング
順位 | 大学名 | 平均 |
---|---|---|
1 | 慶應義塾大学 | 73.3 |
2 | 東京慈恵会医科大学 | 68.5 |
3 | 順天堂大学 | 68 |
4 | 日本医科大学 | 67.5 |
5 | 防衛医科大学校 | 66.8 |
6 | 大阪医科薬科大学 | 65.8 |
7 | 自治医科大学 | 65.3 |
7 | 昭和大学 | 65.3 |
9 | 産業医科大学 | 65 |
10 | 関西医科大学 | 64.8 |
11 | 東邦大学 | 63.8 |
12 | 国際医療福祉大学 | 63.5 |
13 | 日本大学 | 63.3 |
14 | 東京医科大学 | 62.8 |
15 | 近畿大学 | 62.5 |
16 | 愛知医科大学 | 62 |
17 | 東北医科薬科大学 | 61.5 |
17 | 杏林大学 | 61.5 |
17 | 東京女子医科大学 | 61.5 |
17 | 藤田医科大学 | 61.5 |
17 | 久留米大学 | 61.5 |
22 | 北里大学 | 61 |
22 | 帝京大学 | 61 |
22 | 東海大学 | 61 |
22 | 聖マリアンナ医科大学 | 61 |
26 | 兵庫医科大学 | 60.8 |
27 | 福岡大学 | 60.5 |
28 | 岩手医科大学 | 60 |
28 | 金沢医科大学 | 60 |
30 | 獨協医科大学 | 58.8 |
30 | 埼玉医科大学 | 58.8 |
32 | 川崎医科大学 | 56 |
総評

ここでは多くの医学部受験生が受ける駿台と河合塾の偏差値を平均化した数値でランキングにしています。
国公立および私立両方に言えるのは、医学部受験ブームに伴い大学間の差が縮まっていることです。
偏差値ランキングを見ても分かるように比較的容易とされている私立大学の医学部でさえ偏差値58以上は最低でも必要となっています。
では、偏差値ランキングを踏まえてまずは国公立大学医学部から見ていきましょう。
都市部・格付け上位の国公立は偏差値が高め
やはり東大理三を筆頭に旧帝大や首都圏の国立大学が偏差値上位に位置している傾向にあります。
第7位に位置する奈良県立医科大学は、前期の定員が非常に少ないことから競争率が高くその分偏差値が高くなっています。
医学部再受験生の多くは、学費負担の少ない国公立を志願する人が多いですが、この場合地方の国公立大学医学部は立地の面で都市部に比べて人気が劣り、合格しやすい偏差値となっています。
ただし、地方でも格付けが高い「長崎、熊本、金沢、岡山」などの旧医科大学をルーツにもつ医学部は、他の地方国立大学よりも偏差値は高めです。
また、それ以外の大学でも最低偏差値60以上の高度な学力が要求されるため、地方国立大学だからと言って決して簡単ではないので注意が必要です。
学費の安い大学ほど私立は偏差値が高い
次に私立大学医学部の偏差値ランキングを見ていきましょう。
私立の場合は大幅に学費を値下げした日本医科大学の偏差値が上がり、慶応・慈恵・日医の御三家が上位を独占しています。
日本医科大学はもともと年齢に寛容な傾向であるため、再受験生が目指す上位の私立大学医学部としてはおすすめです。
西日本では昔から上位の難易度を誇る大阪医科薬科大学が偏差値ランキングで6位に位置しており、関西の優秀な受験生が集まっていることが分かります。
私立は学費の安い医学部が偏差値が高い傾向にあり、学費を同じく値下げた帝京大学は難易度が上昇しています。
帝京大学は偏差値も中堅程度で学力勝負を基本路線としているので再受験生には魅力的な大学です。
医学部再受験生の場合は、偏差値だけでなく年齢に寛容かどうかで判断しないと不当な受験差別の被害にあってしまうので志望校選びの際はしっかりと調べておきましょう。
2022年度の医学部入試はどうなる?
2022年度も医学部入試は依然として難易度が高いことが予想されます。
定員数については、新型コロナウイルスの影響で十分な議論ができなかったことから、2022年も引き続き現在の定員数が維持されることが発表されています。
また、不況になると安定した職業である医師を目指す受験生が増加する傾向にあり、今回もコロナ不況で他の理系学部から医学部を目指す受験生も増えるでしょう。
いずれにせよ、2021年度と同様に2020年度も高い偏差値が医学部合格には求められると考えておいて損はありません。
難易度面で医学部再受験生におすすめの大学はどこ?

三重大学医学部
三重大学医学部は三重県津市江戸橋2-174に所在を置く、三重県唯一の国立大学です。
キャンパスが全学部で統一されていて、国公立医学部としては珍しく他学部と6年間同じキャンパスで過ごすことになることが特徴です。
2022年度における河合塾偏差値は65と国公立大学医学部では平均的な位置にいることが分かります。
一番の特徴としては、医学部再受験に対してかなり寛容であるということ。
毎年一定数の医学部再受験生が合格しており、面接でもまったく圧迫的な質問がないため、医学部再受験生にとって本当におすすめといえます。
また、問題の難易度も国公立医学部にしてはかなり易しめであり、高難易度の問題を解くよりも、いかに易しい問題を落とさずとるかが重要になります。
難問の対策をとる必要がなくなるので、時間のない医学部再受験生にはかなり狙いやすいと言えます。
福井大学医学部
福井大学医学部は福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3に所在を置く、福井県の総合大学です。
福井大学医学部は河合塾偏差値62.5と、国公立医学部の中ではやや合格しやすい位置にいます。
京都・大阪といった関西圏と名古屋・岐阜といった中京圏からの受験者が多く、地元の医学部に届かない層が共通テストの点数を踏まえて福井大学医学部を受験する流れが強いです。
福井大学医学部も毎年、一定数の医学部再受験者の合格があると報告されており、やや寛容であると考えられます。
福井大学医学部は英語がやや難、数学・理科がやや易から標準レベルの問題難易度です。
医学部再受験生にとって英語は得点源であることが多く、周囲に差をつけることが可能と考えられ、また理系科目は発展的な内容はほぼ出ないので対策がかなり取りやすいことが特徴。
医学部再受験生の強みを活かし、弱みを軽減できるのでかなり合格しやすいと言えます。
藤田医科大学医学部
愛知県豊明市沓掛町田楽ヶ窪1-98に所在を置く、単科医大の一つです。
2022年度の河合塾偏差値は65と私立医学部の中で平均的な位置にいます。
藤田医科大学医学部は医学部再受験生の受験が多く、またほとんど毎年医学部再受験での合格者も2桁人数出ていることが発表されていて、医学部再受験に対して寛容な態度であることがうかがえます。
藤田医科大学医学部の問題難易度ですが、福井大学医学部と似ていて英語がやや難で、他の理系科目が標準レベルです。
そのため英語を得点源とする医学部再受験生の場合、英語でかなり差をつけることが可能になり、合格に近づけるでしょう。
ただし、理系科目は標準的といいましたが、化学だけはやや難の問題で構成されることが多く、医学部再受験生は独自の対策をとった方がよさそうです。
化学は解答に手間がかかる問題や医学に関する問題も出されるので、過去問を通じて傾向を把握するとよいでしょう。
久留米大学医学部
久留米大学医学部は福岡県久留米市旭町67に所在を置く総合大学で、私立医学部の中では伝統のある大学として有名です。
2022年度の河合塾偏差値は65と、藤田医科大学医学部と同じくらいの平均的な合格難易度です。
久留米大学医学部は元来、医学部再受験生に対して寛容な態度をとっていると言われており、2018年の東京医大を皮切りとした不正入試についても、文部科学省の調査で問題なしと認定されていることがポイント。
久留米大学医学部の問題難易度ですが、英語は標準、理系科目はやや易と非常に医学部再受験生にとって合格しやすい設定になっています。
高得点争いになってしまうことさえ注意すれば、医学部再受験生に対する差別もないため、十分に合格できるのでおすすめです。
医学部再受験生が偏差値以外で注意したいポイント

合格できる医学部を目指す
医学部によっては年齢が上がると合格者数が減少するなど、現役生や浪人生を好む大学があります。
したがって、医学部再受験生は偏差値だけでなく、年齢に関係なく合格できる大学を目指すのが最短ルートです。
地方国立大学は偏差値もそこまで高くはなく、年齢に関係なく合格者を受け入れている大学があります。
合格しないと医師へのスタートラインに立つことができないので、入りたい大学ではなく、入れる大学を目指しましょう。
私立大学も候補に入れる
医学部再受験生は学費の安い国公立大学が人気です。
しかし、国公立大学医学部は前期日程と後期日程の2回しか受験チャンスがなく、失敗してしまうと翌年度に再挑戦となり、更に年を重ね不利になってしまいます。
したがって、併願受験ができる私立大学医学部も候補に入れることが重要です。
私立大学医学部は、国公立に比べて偏差値が下がるだけでなく、入試も文系科目や共通テスト対策が不要なので、その分科目を絞って集中できるメリットがあります。
入試科目と配点比率も忘れず確認
偏差値を確認することも重要ですが、医学部再受験生一人ひとり得意科目が違うように、入試制度も各大学で異なってきます。
したがって、自分の得意科目の配点比率が高く、苦手科目の配点比率が低い医学部が一番合格できるチャンスが高いと言えます。
1点でも多く点数を取ることが医学部合格では必要不可欠。
各医学部の入試科目や配点比率を確認して自分との相性を確認しましょう。
最新の合格実績を確認すること
医学部再受験生の場合、合格しやすい大学を選ぶことが重要だと紹介しましたが、参考にする情報は最新の入試結果を活用しましょう。
というのも、昔から医学部再受験生にとって寛容だった大学が、方針を変更して急に年齢に厳しくなることがあるからです。
もちろん、過去、医学部再受験に厳しい大学の22歳以上合格者が増加することもあります。
したがって、最新の偏差値情報を参考にするのと同じように、寛容度も直近の入試結果を利用して医学部再受験生の合格状況を確認するようにしましょう。
医学部予備校を活用する
ここまで記述した偏差値以外に注意したいポイントですが、確実な合格に直結するためにそれぞれを十分に行うのは独学ではかなり難しいことがあります。
例えば、再受験に寛容な大学とそうでない大学の見極め、各大学の過去問の入手と傾向の分析、模試の結果の分析と学習計画への還元、過去の倍率や問題の傾向や動向から自分に相性のいい大学選び、などが合格を大きく左右する行動になります。
これらはすべて「情報力」。実際に医学部受験を成功させた先輩が身近にいればその成功体験を伺うことができますが、それは一例に過ぎません。
これまでに多くの医学部受験生を毎年輩出し、ほぼすべての大学の過去の受験情報を抱えている医学部予備校は、その点で最強の情報力を有しているといえます。
そのため、確実に合格を決めたい医学部再受験生には医学部予備校を活用することがおすすめです。
もちろん、本科生として予備校に通うことができれば最も手厚いサポートをうけることができますが、経済的に難しい人も多いはず。
その場合は、単科受講や短期講座を受講することをおすすめします。少なくともこの期間は予備校生の一員ですので、その予備校が保有する大学情報や過去問などにアクセスすることが可能です。
分析や自分との相性を考えるのは自分自身の力になりますが、単に偏差値のみで受験校を選ぶよりも確実に合格可能性を高めることができます。
まとめ
医学部の偏差値で自分の目標とする大学をある程度絞ることは可能です。
しかし、医学部再受験という特有なバックグラウンドから年齢に寛容的な大学を選ぶことも短期合格を実現するためには重要となります。
入試不正が発覚したことにより、年齢差別もなくなったと言われていますが、22歳以上の合格者が減っている医学部があるのも事実。
やはり、年齢に寛容的で多くの医学部再受験生が合格している大学を目指すことが一番だと言えるでしょう。