直近の2021年度入試では、これまでのセンター試験に代わり、初めての共通テスト試験が実施され、改革が進んでいる大学入試。
実は「調査書」についても2022年度からの変更、2025年度からの変更予定と動きがあることをご存知でしょうか?
この記事では、巷で話題となっているこの調査書について、今回は医学部再受験に関連づけて解説していきます。
調査書の改訂について
まずは前述した、調査書の改訂の動きについて、簡単に解説していきます。
2021年度入試から様式変更で情報量が増加
共通テストにも見られる日本の教育改革。
小学校の英語教育など多くの面で改革が進められていますが、その中の一つ「高大接続改革」で調査書の様式変更が図られています。
この変更は「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」の多面的・総合的な評価に活用できると図られているものだと考えられています。
詳細は割愛しますが、この様式改定により、調査書に盛り込まれる情報量は増加することになりました。
これを受けて、大学受験全体としても、筆記試験だけでなくこの調査書も合否の評価対象にする流れが加速しています。
2025年度にも変更予定
2021年度7月、調査書についてまた新たに変更点が発表されました。
2025年度入試から適応されるこの様式変更では、改善が加えられると同時に、「総合の時間の評価」がより具体的になり、より受験生の高校時代の主体性や協調性の評価ができるようになりました。
調査書は医学部再受験でも求められる書類
さて、調査書の様式変更の動きを簡単に解説しましたが、医学部再受験生にとってはどうすることもできない内容です。
そもそも、調査書についてよく分からない医学部再受験生も多いはず。
ここでは、そもそも調査書とは何かについて簡単に解説していきます。
調査書は高校が発行する「高校3年間の記録」
調査書については、前述のように文部科学省が様式を決めており、どの高校出身者でも同じ情報が載るようになっています。
具体的には、以下の内容が盛り込まれます。(2021年度現在)
- 学業成績
- 総合的な学習の時間の内容・評価
- 特別活動の記録
- 学習における特徴
- 行動の特徴、特技
- 部活動、ボランティア活動、留学・海外経験
- 取得資格、検定
- 表彰・顕彰などの記録
- 出欠
調査書と聞くと、おかたい感じの書類のイメージを持つかもしれませんが、簡単には3年間の通知表のまとめのようなものです。
自分を受け持った各学年の担任が責任を持って発行するもので、自分の高校3年間の記録です。
出願に調査書が不要な大学はほとんどない
医学部受験においては、この調査書を求めてこない大学は皆無です。
大学受験の制度上、提出を求める大学がほとんどで、その使用用途は様々。
医学部受験における調査書の扱いは後述しますが、医学部再受験生の場合、人によってはこの調査書を発行してもらえない可能性もあるので注意が必要です。
調査書の取得方法
調査書の取得方法はこちらの記事で解説しています。
郵送など先生に直接合わなくても済む方法なども解説しています。
医学部再受験生の中でも、高校卒業後5年以上ないし20年以上の場合には、調査書ではなく成績証明書や単位修得証明書、卒業証明書が必要になる場合もあるので、この記事で必ず早めの確認が必要です。
医学部再受験〜調査書の扱われ方〜
ここまで、調査書について一般的な内容を解説してきました。
では、この調査書は医学部再受験ではどれほど重要なものなのでしょうか。
調査書の評価方法は大学ごとに3パターン
文科省の通達により調査書が重要視されるようになった近年の大学受験ですが、医学部受験においてもその波は確かに見受けられます。
ただし、医学部は2020年度以降、全ての大学で面接が課されているため、調査書の評価を新たに加えることに慎重な動きを見せています。
その評価方法は大学により様々ですが、大きく3つに分けられます。
- 点数化する大学
- A〜Eのように段階評価を行う大学
- 具体的な評価方法を明示せず「参考程度」とする大学
2022年度入試では「参考資料」とする大学がほとんど
前述のように、医学部はもともと面接を行なっており、すでに昔から調査書を参考として見てきた歴史があります。
そのため、わざわざ新しく評価対象に加える大学は珍しいようです。
実際には、新様式の調査書を評価するには労力がかかり、他学部の入試でも私立大学はほとんど評価対象としてない事実があります。
結論、医学部再受験生は、後述する大学を受験しない限りは、調査書についてあまり気にかける必要はないと言えます。
ただし、実際に調査書の改訂が行われたのは2021年度入試からとまだまだ最近のことであり、今後医学部受験でも調査書の扱いが重要視されるかもしれないため、来年度以降に受験する医学部再受験生は最新の情報に注意が必要です。
点数化する大学には注意が必要
全国82ある医学部の中でも、調査書を具体的に点数化すると明言している大学はいくつか存在します。
ここでは、医学部再受験生が注意すべき大学として一覧にしてご紹介します。
【2022年度入試】「点数化」する大学
国公立大学
大学 | 調査書の点数 | 備考 | 医学部再受験に対する寛容度 |
---|---|---|---|
信州大学 | 面接と合わせて150点 | 調査書は面接の参考資料とする | かなり寛容 |
愛媛大学 | 面接と合わせて100点 | かなり厳しい | |
佐賀大学 | 100点 | 厳しい | |
長崎大学 | 40点 | 寛容 |
2022年度入試で調査書の点数化を明言しているのは上記4大学のみ。
信州大学と愛媛大学は従来の面接評価方法と変更がなく、具体的な点数化方法は明示していません。
一方、佐賀大学と長崎大学は点数化について具体的に掲示しているため、受験を考えている医学部再受験生は要注意です。
なお、医学部再受験に対しての寛容度も合わせて掲載していますので参考にしてください。
また、点数化の具体的な内容までは触れていないものの、
金沢大学も合否ボーダー層にのみ点数化して合否評価に用いると明言しています。
金沢大学の医学部再受験に寛容な大学でもあるので要チェックです。
なお、点数化して用いるのは金沢大学のみのようですが、5段階で評価するなどして合否判定の際に用いると明言している大学は多いようです。
私立大学
私立大学で2022年度入試における調査書の点数化を明言しているのは2大学のみです。
大学 | 調査書の点数 | 医学部再受験に対する寛容度 |
---|---|---|
東京慈恵会医科大学 | 25点 | かなり厳しい |
兵庫医科大学 | 100点 | 寛容 |
また、点数化とまではいかないものの、「面接は調査書の評価を含む」と明言した大学が3校あります。
大学 | 調査書の点数 | 医学部再受験に対する寛容度 |
---|---|---|
金沢医科大学 | 110点 | 厳しい |
藤田医科大学 | 40点 | 寛容 |
なお、具体的な点数化の方法は、概ねどの大学でも成績を主に利用しているようです。
そのほか、特別な活動についても評価を加える大学もあるため、詳細については各大学の募集要項で確認が必要です。
したがって、医学部再受験生の中で、もし高校の評定平均値が低いのであれば、こういった大学は避ける方が無難でしょう。
逆に、医学部再受験生の中でも点数が高い人は、有利に働く可能性があります。
遅刻と欠席は傷物か
調査書について、医学部再受験生の中で飛び交う噂の中に、「遅刻や欠席が多いと落とされる」というものがあります。
これは完全なるデマ情報。
確かに、遅刻や欠席が多い場合には不信感を与えますが、必ずと言っていいほど面接の場で言及されます。
その時に理由や改善したことなどをしっかりと回答できれば何の問題もありません。
遅刻や欠席だけを理由に医学部再受験を失敗することはまずあり得ません。
逆に武器にする方法
ここまで医学部再受験では調査書はほとんど重要ではないとお伝えしてきました。
そんな調査書も、推薦入試・AO入試では命と言えるほど大事になります。
ただし、医学部再受験の場合はほとんどの推薦・AO入試の募集資格に当てはまりません。
ここでは、数少ない、医学部再受験生でも受験可能な医学部の推薦試験・AO試験について簡単にご紹介します。
医学部再受験でも受けられる推薦・AO入試
学校推薦型選抜(推薦試験)
2021年度から、文部科学省の入試区分の名称変更により、従来の推薦入試は「学校推薦型選抜」に統一されました。
しかし残念ながら、ほとんどの医学部の推薦入試は現役・一郎のみ。
国公立大学では唯一、京都府立医科大学の特別選抜のみ、4浪までに受験資格があるため、該当する人は挑戦することが可能です。
私立大学では、獨協医科大学の総合型選抜が30歳未満、金沢医科大学の総合型選抜が25歳以下、川崎医科大学の総合型選抜が22際以下となっており、一部の医学部再受験生であれば出願可能です。
AO入試
AO入試にもなるとかなり狭き門。
国公立大学では大分大学のみ、2浪以下が可能で、
私立大学では獨協医科大学で26際以下、順天堂大学は社会人可となっており、そのほか、金沢医科大学で25際以下、藤田保健衛生大学で2浪以下まで可能となっています。
まとめ〜合否はズバリ学力で決まる〜
この記事では、医学部再受験と調査書について、解説してきました。
医学部再受験に限らず、医学部受験において調査書は重要性が低いことがお分かりいただけたでしょうか。
結局のところ、医学部再受験で合格を勝ち取るためには学力を上げることが一番です。
高校卒業後何年経っていても、合否を分けるのは試験当日の成績のみ。
各種証明書など出願書類の準備には手間がかかりますが、早々に済ませ、最後までしっかり受験勉強に励んでください。