50代でも医学部再受験で合格できるか?
医学部再受験生は、20代や30代だけではありません。
社会人経験が豊富で仕事で一つの成功を収めた50代でも、人生を最後の挑戦として医学部再受験を決意する人もいると思います。
医師という職業に魅力を感じ、子育てがひと段落したこの機に医学部再受験生を目指す人も少なくないでしょう。
ただし、医学部を目指すこと自体は50代でも何歳でも可能ですが、問題は合格して入学できるかどうかです。
日本では、原則、医学部再受験で大学に合格して医学科を卒業しない限り、医師免許の国家試験に受験することができません。
50代で医学部再受験を成功できるか、詳しく確認していきましょう。
40代に比べてお金や時間に余裕な人が多い
既婚者の40代の場合は、子育の高校や大学進学など教育費が一番かかる世代ともいわれており、経済的に厳しい人が多いです。
いっぽう、50代は子供が独立している家庭も多く、早期退職制度を利用すれば金銭や時間に余裕が出てくる人も出てきます。
したがって、医学部再受験を目指す場合には40代と比較すると勉強に専念しやすい環境があると言えるでしょう。
医学部合格者数を見ても高齢で厳しいのが現実
50代の医学部再受験でも合格することは可能なのか?
ここでは、実際に医学部医学科で50代の合格者が出ているかをある年度のデータを使って確認してみましょう。
下記の表は、大学団体、認証評価機関等から構成される「大学ポートレートセンター」によってまとめられた国公立大学医学部医学科の年代別合格者数です。
この中から医学部再受験生であろう40歳以上の入学者がいる大学に絞ってまとめてみたので参考にしてみて下さい。
30歳以上の入学者がいる国公立大学医学部一覧
年度 | 2020年 | 2019年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
大学名 | 40~44歳 | 45~49歳 | 50歳以上 | 40~44歳 | 45~49歳 | 50歳以上 |
岐阜大学 | 0 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 |
三重大学 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 |
神戸大学 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
山梨大学 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
島根大学 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
富山大学 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
琉球大学 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
大阪市立大学 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
奈良県立医科大学 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
福島県立医科大学 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
上記、2020年および2019年に実施された医学部入学者を国公立大学の中で、40代以上の入学者がいる大学を集計しました。
この結果、40代の合格者を輩出している国公立大学はあるものの、50代はいませんでした。
また、私立大学医学部なら50代の医学部再受験生で合格者がいるかもしれません。
もともと50代の医学部再受験生自体が少数であることも影響していますが、50代で医学部合格を実現させることは非常に厳しいと言えるでしょう。
50代で医学部再受験を成功させた人もいるが限定的
50代の医学部再受験生は、これまでメディアで取り上げられた実績もあることからゼロではないことが分かります。
しかし、毎年、50代の医学部再受験生で合格者がいるとは言えません。
もともと医学部再受験生の多くは20代や30代が多く、40代や50代はやはり少数派で情報も少ないのが現状です。
年齢がネックとなり諦める人が多いのも事実でしょう。
ではなぜ、50代や40代の医学部再受験は憧れがあっても諦めてしまう人が多いのは下記のようなケースがあるからです。
医師になって社会貢献できる期間が年齢的に限られる
50歳で医学部再受験を成功して入学できたとしても、大学を卒業する頃の年齢はストレートに進級できても56歳。
ここから、必須である初期臨床研修に参加して2年間を無事に修了する頃には58歳です。
初期臨床研修を終えて医療行為ができるようになったとしても、医師としてはまだまだ半人前。
ここから、専門医を取得したり、多くの症例や臨床を経験して一人前になる頃にはゆうに60歳は超えています。
医師として社会に貢献できるのは残り15年から20年です。
いっぽう、高校を卒業後に医学部へ入学した人は、30歳で医師としてある程度の経験と知識を積んで残り45年から50年は社会に貢献することができます。
医師を育てる大学側としては、やはり年齢が若いほうを好むのは言うまでもありません。
特に税金が多く投入されている国立大学は50代での合格は厳しいと言えるでしょう。
医者は仕事柄体力勝負的な要素も強い
医師という職業は精神的・体力的にも非常にハードな職業です。
特に研修医時代は夜勤を経験する必要があり、年齢的には相当きついでしょう。
しかも、若いように勉強を進めることは困難で、理解力・記憶力も低下しており、この中で偏差値60以上が必要と言われてる医学部に合格することは非常に厳しいと言えます。
医学部受験生は1日10時間以上勉強する人も珍しくありません。
50代という年齢を考えれば、医学部再受験生活から困難が待ち構えていると思って良いでしょう。
面接試験で不合格の例もある
上記のように、50代は年齢的にも社会に貢献できる期間が短く、体力的にも厳しいことから敬遠する医学部も多いと思います。
実際、医学部では面接試験があり、医師としての素養を見極めています。
医学部再受験は単純に学力勝負でないことが、50代の合格を難しくしているところでもあります。
実際に、過去に56歳の主婦が群馬大学医学部を不合格になって裁判になったケースがありました。
この方は筆記試験では合格点に達していたものの面接試験で不合格になったのです。
裁判では原告側が面接試験の情報開示を求めたら、裁判所側がその要求を退けました。
また、年齢を理由に入試で不合格になった主張も「証拠がない」という理由で訴えを棄却されたのです。
このように、50代の医学部再受験生は年齢を理由に不合格になってしまうというリスクがあるのを覚悟しておく必要があります。
まとめ
50代の医学部再受験は過去にも存在しており、決して不可能ではありません。
ただし、面接で不合格になった50代主婦のケースもあり、医学部再受験が有利になることはないと言えます。
また、最近の医学部入試においては40代の合格者を輩出している国公立大学があることは分かりました。
したがって、医学部再受験で本気で医学部合格を実現したいなら、子育てがひと段落してからなど後回しでは合格の可能性を大きく逃してしまうことになります。
つまり、30代や40代など医学部再受験を思い立った時がベストのタイミングとなります。