現役国立大医学生が再受験を解説

こんにちは現役国立医学部生のむぎなべです。
医学部といえば、現役ではなかなか入学できず何浪かしてしまうことがほとんどです。
それは国立私立を問わず同じ。
中には、他大学を卒業してから医学部に入学する、いわゆる医学部再受験という方も珍しくありません。
この記事ではそんな医学部再受験について、現役国立医学部生としての視点からコメントも交えて、解説していきます。
医学部再受験の実際

医学部再受験は国立私立問わず、どこの医学部にも少なからずいます。
ここでは現役国立医学部生の筆者から見た医学部再受験について解説していきます。
実際の年齢層は?
医学部再受験といえば多くは他大学卒業生のため、年齢は22歳以上がほとんど。
中には子供が親離れをし第二の人生が始まることをきっかけに医学部再受験を試みるという、高年齢の人も時々見聞きします。
受験生で見ると医学部再受験の年齢は平均しても30代前半という印象です。
実際に合格し医学部生として大学にいる人では、正直20代後半が多いのが現状かもしれません。
また、国立では年齢の幅が大きいですが、私立の医学部再受験合格者は比較的若い人に偏っている印象も。
この医学部再受験生の年齢層と実際に合格した医学部再受験の年齢層の矛盾は、大学側の医学部再受験への寛容度やそもそもの医学界の考え方などが大きく関わっているといえます。
実際、2018年には医学部入試差別問題で年齢差別が明らかに。
これについてはこの後、コメントします。
年齢で悩む医学部再受験生に向けて
多くの医学部再受験生が、受験を決意する段階で自身の年齢について不安を抱く傾向にあります。
確かに実際のデータとして年齢が若いほど合格率が高いのは事実。
しかし、その一般化されたデータが全ての人に適応するわけではなく、あなた自身が絶対に受からないという理由にはなりません。
実際に年齢が高くても医学部再受験を成功している人の共通点は、「意志の強さ」。
筆記試験で合格点を叩き出すことはもちろん、5-10分の面接や数百文字の小論文において、年齢を気にされないほどの『熱い意志』を表明することができれば、国立私立問わず年齢に関係なく合格を勝ち取ることができるものです。
文系,理系どっちが多い?学力は?
医学部は理系の学部であるため、入学者のほとんどが理系です。
しかし、特に医学部再受験生など、中には文系出身という人も決して少なくありません。
実際のところ、医学部再受験合格者全体としては国立も私立も文系出身者は2-3割程度いるものです。
高校時代に医学部を志望していたもののそのレベルの高さに挫折して文系大学に進み、それでも諦めきれず大学卒業後に改めて医学部再受験、という経緯をよく耳にします。
医学部再受験の合格者の学力ですが、合格大学の偏差値よりも高い傾向がほとんど。
つまり、入学時では医学部再受験生のほとんどが成績上位にいるということ。
これは現役国立医学部生の筆者の学年でも顕著でした。
というのも、医学部再受験では「最短合格」に重きを置くことが多く、受験校は「挑戦」するのではなく「堅実校」を選択して挑むことが多いから。
印象として、国立私立ともに必要な偏差値の+2〜+5程度を安定して維持できているとかなり合格が安心できます。
また、国立大学医学部に合格している医学部再受験生は受験に必要な科目数が国立では私立より多い分、医学部再受験全体としても優秀な印象です。
医学部入試差別問題
2018年に社会問題となったのが、医学部入試差別問題。
ニュースでも大々的に取り上げられ、一時は大きな波紋を呼びました。
事件の概要は、複数大学の医学部入試において、「年齢」や「性別」を理由に、不当に減点処理が施され、筆記試験で十分に合格点に達していた受験生が不合格となっていたことが明らかとなったというもの。寛容かどうか以前の問題でした。
文部科学省が全医学部入試の調査に乗り出すほど大きな問題となったこの事件ですが、医学部再受験にとっても大きな話題でした。
実のところ、医学界において年齢や性別によってその後の期待値が異なる、という見はあったようで、これには地域性も大きく関わるのですが、そのようなコメントを発表した大学もいたほど。
これについてはかなり議論の余地がありますが、ここではこの問題から学べることを確認するにとどめます。
医学部入試差別問題から学ぶべきことは『年齢や性別に不当な差別をしない大学もある』つまり寛容な大学があるということ。
文科省が介入したことで、一旦の落ち着きを見せたこの問題ですが、真に完全な公平化が起きたかというと疑問が残るところです。
後述するように、『医学部再受験に寛容な大学と、寛容でない大学が事実ある』ということを、強く認識する必要があります。
その上で、実際に合格者がいるかなど情報を回収して適切な受験校を選ぶ必要があるのです。
学生生活 of 医学部再受験

医学部再受験は気にされない
冒頭で年齢について言及した通り、医学部再受験は年齢が高めなのが事実。
そのため、大学入学後に浮いてしまわないかというコメントをよく耳にしますが、答えは『NO』。
国立大学私立大学を問わず、医学部受験はかなりの難関を極めるため、多浪生が珍しくありません。
浪人の平均は国立大学で2,3年、私立大学では4,5年という話も聞きますが、浪人年数が外れ値になるのは国立の方が多いもの。
というのも、経済的に私立大学には通えないことから何年も努力を重ねて国立大学に合格したという人が珍しいながらいるもので、現役国立大学医学部生の筆者の友人にはストレート8浪で念願の医学部入学を果たした人がいるほどです。
医学部は国立大学私立だいがくを問わず、そんな特殊な状況のため、20代30代の医学部再受験であれば、それだけで目立つことはまずありません。
医学部再受験はむしろ人気者?
医学部再受験の人は一般の受験生よりも社会経験が豊富。
さらに、特に国立大学に顕著ですが、一般の医学部受験生は高校時代から勉学に全力を注いでいた人が多く、社会経験が同年代より比較的少ないことも。
そのため、日常生活でのトラブルや悩み、恋愛相談など、経験豊富な医学部再受験生に意見を求めるという人もいます。
元看護師・元医療機器メーカー勤務といった経歴の医学部再受験は特に、クラスの人気になる傾向があります。
現役国立大学医学部生の筆者の学年でも、勉強ごとになると東大京大出身者に相談、恋愛や結婚の相談、小児科の質問は既婚の医学部再受験生にするなど、慕われている人が何人もいます。
再受験生は留年しにくい?
意外と知られていないのが、医学部の「留年」の事実。
医学部は他学部と異なり、ほぼ全ての科目が必修科目です。
したがって、寛容な大学と寛容でない大学とがありますが、一つの単位を落とすとそれだけで進級が不可能となり、すなわち留年を余儀なくされます。
そのため、国立大学私立大学を問わず医学部生は試験期間になるとかなりの熱量で試験対策に挑みます。
しかし医学部の科目は膨大で、ひどい場合には隔週で試験というスケジュールも。
医学部生の中には部活やアルバイトに熱を注いでいる人も少なくなく、ギブアップした末に再試になることも珍しくありません。
しかし、医学部再受験生は「年齢」にビハインドを抱えていることから、『最短での卒業』に強い意志がある人がほとんど。
過酷なスケジュールの中でも必死に勉強を継続するため、医学部再受験生は留年しにくいと言われています。
現役国立大学医学部生の筆者の周囲でも、医学部再受験生で留年したという人はあまり聞きません。
再受験の合格難易度、おすすめの大学を国立・私立別に紹介

再受験に寛容でない大学は事実存在する
前述したように、国立私立ともに医学部再受験においては『寛容な大学』と『寛容でない大学』があるのが事実。
結局これもデータでしかないため、例え寛容でないと言われている大学でも実際に受験することは可能ですが、やはり厳しいもの。
ここでは、そういった事情を踏まえて、全国医学部の中から、医学部再受験に対して寛容な大学を、国立・私立それぞれご紹介します。
なお、医学部受験は一般入試の他に、国立私立ともに地域枠や推薦入試、AO入試などもありますが、そのほとんどが現役生や1-2浪生までを対象としているため、ここでは言及しません。
【国公立大】再受験に寛容な大学とは
まずは国公立大学で医学部受験に「かなり寛容」とされている大学を一覧にしてご紹介します。
- 東京大学
- 山梨大学
- 新潟大学
- 信州大学
- 岐阜大学
- 名古屋市立大学
- 三重大学
- 奈良県立医科大学
- 滋賀医科大学
- 大阪大学
- 大阪公立大学(大阪市立大学)
- 岡山大学
- 島根大学
- 香川大学
- 九州大学
- 熊本大学
- 琉球大学
この中でも多くの医学部再受験生におすすめな国立大学が、太字で示した9大学。
どれも地方の国立大学ですが、毎年10人以上、中には20人近くの医学部再受験生を合格としている国立大学もあり、確実に合格を決める受験校としておすすめです。
そのほかの国立大学も医学部再受験に寛容な大学ですが、旧帝大であったり都市部の大学であったりとライバルのレベルが高く挑戦校となる国立大学と言えます。
【私立大】再受験に寛容な大学とは
次に私立大学で医学部受験に「かなり寛容」とされている大学を一覧にしてご紹介します。
- 東北医科薬科大学
- 国際医療福祉大学
- 日本医科大学
- 大阪医科大学
- 関西医科大学
- 近畿大学
この中でも多くの医学部再受験生におすすめな私立大学が、太字で示した3大学。
ここでは近年新設の2大学についてコメントします。
東北医科薬科大学・国際医療福祉大学
これら2大学はどちらも2010年後半に設置されたばかりの超新設大学。
国立大学を含め、新設大学では医学部再受験など年齢を問わず、純粋に成績の良い受験生を合格させる傾向にあります。
どちらも私立の中では学費がかなり安く国立志望者にも手が届きやすいため、英語に自信があったり自身のキャリア経歴を十分にアピールできる文系医学部再受験生は、ぜひ受験してみることをおすすめします。
合格のために重要なこと

受験は情報戦〜予備校も要検討〜
大学受験そのものが情報戦ですが、医学部受験、その中でも医学部再受験となるとなおさら『情報力』は合格をかなり大きく左右します。
例えば上述の医学部再受験に対する寛容度、進級後の留年率や国試合格率も受験校選びには必要な情報。
そのほかにも国立であれば他学部共通問題の有無なども難易度に大きく影響します。
たくさんの情報がある中で、それらを1人で取捨選択して解釈するのは受験生には難しく、国立志望であれば尚更負担となってしまいます。
そのため、情報の提供や自分の学習進捗どの管理などはプロである予備校などに任せることを検討することがおすすめです。
医学部再受験となると尚更、「情報を制したものが合格する」といっても過言ではないほどです。
面接・小論文対策は日常で
現在ではほとんどの大学で実施されているのが面接・小論文試験。
その大学の志望理由はもちろん、医師を志す経緯や将来の展望など、多くのことが聞かれます。
社会問題となっている事象や、これまでのあなたの経験から学んだことを問われることもあります。
多くの受験生が、面接・小論文対策を直前1ヶ月ごろから始めますが、現役国立医学部生の筆者は『日常から準備しておく』ことを強くおすすめします。
そもそも医学部受験生は、特に面接において、なぜ現役で目指さなかったのか、なぜ今回志望しているのかなどしつこく聞かれることも。
国立私立問わずどこの大学でも問われる内容に、医学部再受験としてその年齢や経歴に相応しい回答をする必要があるのです。
そのためにも、国立や私立の試験直前に対策するのではなく、医学部再受験を決意した直後から、日頃から自分の考えや経緯を文書化して伝える訓練をしておきましょう。
当然、ニュースなどの時事ネタに対してもただ聞き流すのではなく、個人としての意見を持つことも面接や小論文対策につながります。
まとめ〜国立医学部生からみた医学部再受験〜
ここまで、医学部再受験について現役国立大学医学部生の視点からのコメントを交えて解説していきました。
医学部再受験自体は決して珍しくありませんが、決意を固める人が多い中で、奮闘したもののなかなか合格を掴めず諦めたという人も一定数いるのが現状。
難易度などを考えると私立を選択したほうが合格しやすい傾向にはありますが、学費などを考慮すると国立しか考えられないという医学部再受験生もいます。
国立を受験するとなると、共通テストを含めた学習必要量が多いため、自己分析を踏まえた各大学の出題傾向との相性が合格にかなり重要となってきます。
情報戦に負けないためにも、医学部再受験の場合には医学部予備校などを活用することを強くおすすめします。
本科生とならなくても、単科受講や短期講座の受講で情報を得ることも可能です。
この記事が、多くの医学部再受験生の一助になれることを願っています。