医学部再受験で気になる調査書について解説

2022年度大学入試も終わり、次の2023年度入試合格を目指している受験生も多いでしょう。
そろそろ2023年度入試の募集要項を公開する医学部が増えてきています。
要項の中に、大学によっては「調査書」を指定しているところがあり、この時期は医学部再受験生から調査書に関連した質問が多くなってきます。
この記事では、医学部再受験における調査書について、よくある質問やトラブルを踏まえて、解説していきます。
調査書とは

調査書とは、大学入試の出願手続きなどで必要になる、出身高校が発行する成績証明書のようなものです。
医学部を含め多くの大学では、出願書類の一つとして調査書の提出を求めています。
ほとんどの場合、厳封が必要で開封すると無効になってしまう形なので、医学部再受験生でもその中身を知っている人は少ないはずです。
ただし、医学部再受験などの一般入試では合否に直接影響するようなことはなく、「書類審査」のある推薦入試やAO入試で重要となる書類です。
なお、共通テスト(旧センター試験)の出願には調査書は必要なく、高校関連で必要な書類は卒業証明書のみです。
調査書に書かれていること
調査書には、高校3年間の成績はもちろん、早退・遅刻・忌引などの日数も記録されています。
そのほか、各学年での担任のコメントも含まれています。
時折、このコメント内容を不安に感じる医学部再受験生がいますが、安心してください。
ここに医学部再受験にとってマイナスな内容が盛り込まれていることはまずありません。
書いた内容が受験に影響することを先生自身よく知っているので、印象の良いコメントの場合がほとんどです。
また、高校時代にボランティア活動をするように促された医学部再受験生も多いようですが、そういったボランティアや課外活動などについても記載されています。
他にも、部活での成績やコンクールなどでの入賞歴、委員会活動などについても書かれています。
いずれにしても、成績など数字としてどうしようもない事実以外、調査書には医学部再受験に不利になるような内容は書かれていないと安心して大丈夫です。
調査書の受け取り方法
卒業後5年以内の医学部再受験の場合は、漏れなく出身高校が調査書を発行してくれます。
氏名・何年に卒業したか・当時のクラスと担任の名前などを聞かれることが多いようなので、事前に思い出してメモしておくとスムーズに対応してもらえるでしょう。
電話が嫌な医学部再受験生は、高校によってはメール対応もしているようなので確認してみましょう。
【高校で直接調査書をもらう】
この方法が最も確実な方法ではありますが、医学部再受験生にとってはわざわざ母校まで行く必要があったり手間がかかってしまうデメリットもあります。
ただし、高校時代に仲の良かった先生がもしもまだ在籍している場合には、医学部再受験生には特にこの方法を強くおすすめします。
というのも、医学部再受験は情報戦イノチ。高校の先生からも、何か有力な情報が得られるかもしれません。
また、医学部再受験では面接対策も非常に重要なため、ここで昔の担任に相談して協力をお願いしておくととても有益です。
逆に、当時の担任など先生の誰にも会いたくないという医学部再受験生も少なからずいるはず。
そんな医学部再受験生は、授業時間に合わせて調査書を受け取りに行くことをおすすめします。
授業時間であれば、ほとんどの先生が席を外しており、わざわざ事務の方も担任の先生を呼ぼうとしたりはしないものです。
【郵送で調査書を送ってもらう】
医学部再受験生の場合、すでに出身高校の近くには住んでいないことも珍しくありません。
多くの高校では、郵送で調査書を届けてくれます。
その場合、到着までどれぐらいの時間を要するかは、必ず確認しておきましょう。
調査書の発行にも郵送にも日数がかかるため、出願期限に間に合わないなんてことがないように、出願の準備はできるだけ早くから始めましょう。
特に、高校関連の書類は時間がかかるものもあるため、医学部再受験生は5通前後と事前に調査書を多めに申請しておいても良いかもしれません。
医学部再受験の中には発行されない場合も

実は医学部再受験生の中には、人によっては高校から調査書を発行してもらえない可能性があります。
学校教育法により、高校や中学の指導要録(いわゆる成績)は、学籍や修得単位については卒業後20年の保存が規定されているものの、成績証明書や調査書といった詳しい内容のものは卒業後5年までとされているからです。
つまり、高校卒業後5年以上経過している医学部再受験生の場合、調査書を発行してもらえない可能性があるのです。
まずは出身高校に確認
ただし、高校によっては卒業後5年を経っても生徒情報を保管しているところも少なくないので、医学部再受験生はまず出身高校に確認をしてみましょう。
高校のホームページに記載されていることがほとんどです。
つぎに募集要項をチェック
調査書が無事に発行される場合は問題ありませんが、発行できないと分かったら次に、その場合の対応について志望大学の募集要項を確認しましょう。
募集要項になければ、その大学のホームページも確認した上で、それでも分からない場合にその大学の大学入試課に電話をしましょう。
必ずどこの大学でも、調査書が発行されない場合の対応を規定しているものです。
しかし、中には電話先の大学事務の方が事情を知らず「調査書がなければ試験を受験できない」と回答されることもあるよう。その場合でも、より詳しい人に代わってもらうなどすれば必ず対応を教えてもらえるはずです。
調査書の代わりになる書類は大学によって様々ですが、一般に
- 卒業証明書
- 成績証明書もしくは単位修得証明書
の二つの証明書類が求められることがほとんどです。
大学によっては、出身高校の学校長発行の「調査書を発行できない旨の証明書」を求める大学もあり、その場合はさらに発行までに時間が必要となります。
医学部再受験における調査書などの役割

ここまで、調査書の受け取り方法、調査書が発行されない場合の対応などを解説してきましたが、医学部再受験である一般試験ではこれらの書類はどのような役割を果たすのでしょうか。
結論から言うと、役割は大学によります。
一般に、推薦入試では評定平均の基準が出願条件に挙げられため調査書が必要になりますが、それ以外の大学の試験制度では参考程度と考えるのが一般的です。
面接の参考資料になる程度
医学部再受験の中で調査書が発行された場合でも、その大学の試験での役割は面接の参考書類に過ぎません。
結局のところ、筆記試験と小論文・面接での評価が試験の合格に大きく影響するわけで、調査書の内容だけで試験の合格・不合格が決まることはないのです。
したがって、医学部再受験生は「調査書などはあくまで証明書」と割り切ることが重要です。
これから内容を変更できるものでもないため、今は試験勉強に集中し、成績を上げ、希望する大学に入学できるように努力を続けましょう。
ただし、遅刻や欠席が高校時代に多かった人は要注意。
目が止まるほどの回数があった場合には、面接で理由を聞かれて当然です。
もちろんこれだけで試験が不合格になることはないので、しっかりとした理由を回答できるように準備が必要です。
高校の成績が悪いと合格判定に響くのか
医学部再受験生の中には、出身高校が進学校ではない人や高校時代に成績が振るわなかった人も珍しくありません。
その場合、調査書や成績証明書などの数字が不安に思う医学部再受験生もいますが、これも気にする必要はありません。
高校時代の成績は過去の話。今、この医学部入学試験でしっかり合格できる学力が大学としても何の問題もないのです。
むしろ、この成績で今医学部?と面接で話題になることで医学部再受験生としてのこれまでの経験などのアピールにつながるチャンスとも言えるでしょう。
調査書で注意したい医学部

先ほど調査書は面接の参考資料程度といいましたが、一部の大学では面接の際に調査書の内容から圧迫的な面接をしてくることもあるので注意が必要です。
とはいえ調査書の内容が悪いだけで減点ということはなく、あくまでも深堀りをしてくるというだけなので対策は可能です。
ここでは調査書で注意しておきたい医学部について書いていこうと思います。
東京慈恵会医科大学医学部
東京慈恵会医科大学医学部といえば私立大学医学部の中で、慶應義塾大学医学部と日本医科大学医学部と並んで御三家と呼ばれるほどの難度の高い医学部です。
東京慈恵会医科大学医学部の面接試験はMMI方式という、約7分ほどの面接を計5回、順番に回っていくという形式です。
東京慈恵会医科大学医学部の面接はそもそもやや圧迫気味であり、かつ二次試験を重視していると言われているので医学部再受験生は注意が必要だと思われます。
調査書を通じてどんどん受験生を掘り下げていき、矛盾があったら指摘されることもあるそうです。
また高校時代の成績を見た時に、数学や英語といった主要科目がいいのに、家庭科や美術といった副科目が悪いこともつつかれることがある様子。
不器用だと判断されると、医者としてやっていけるのか怪しいなどとやはり圧迫気味のことを言われることもあります。
東京慈恵会医科大学医学部志望の医学部再受験生は調査書の内容を自己分析し、どのような質問が来るかを頭の中でシミュレーションしておくとよいでしょう。
順天堂大学医学部
順天堂大学医学部は近年どんどん偏差値が上がってきていて、日本医科大学に代わって新御三家の一つとして扱われることもあるほど、医学部再受験生の中でも人気が上がってきています。
順天堂大学医学部の面接では、賞状などのアピールができることが特徴です。
しかし、2018年に医学部再受験生に対して故意に減点していたなど、不正入試が明らかになっています。
現在は文部科学省が不正がないか目を光らせているので、公平な試験が行われているとは思われますが、そもそも面接を重視していることは間違いありません。
そのため調査書に書かれている内容に沿った質問がされ、深堀りされることが予想されるので、やはり注意が必要だと思われます。
東京慈恵会医科大学医学部の時と同様に、順天堂大学医学部志望の医学部再受験生は調査書の内容を自己分析し、どのような質問が来るかを頭の中でシミュレーションしておくとよいでしょう。
また逆に調査書の内容から、医学部再受験生は自己アピールにつながるものがないかを考えてみてもいいかもしれません。
まとめ
志望大学の出願の際に多くの大学で求められる調査書ですが、その内容がややブラックボックス化しているため、医学部再受験生で不安に思うのも仕方がありません。
しかし、たいていの場合、調査書に医学部再受験に不利になるような内容は書かれておらず、むしろいいことが書いてある場合が多いです。
また、多くの大学で調査書の提出が義務付けられていますが、あくまでも面接試験の際の参考書類として使うだけなので安心してもらえたらと思います。
それでも不安な医学部再受験生は、学校側に請求するときに1枚多く調査書をもらうといいでしょう。
医学部再受験生はその1枚を自己分析するためのものにして、どのような質問が面接官から聞かれるかをシミュレーションするといいと思います。